

森田:いつも授業で「俳優も声優も同じだよ」と言っています。よく「俳優は身体表現を伴う演技をして、声優は声のみで演技をする」と説明されますが、声は身体の一部です。身体を動かすことによって声も変化し、走っているときは走っているときの声が出ます。マイクの前で実際に動き回るわけにはいきませんから、走っているときの身体感覚を思い出してできるだけ再現して、走っている声を出すのです。そうすると嘘のない演技ができます。声だけで状況や感情を説明しない。僕自身が声優の仕事で心がけていることですし、学生にもそう伝えています。

城之内:授業中、学生に「説明っぽい」と指摘をされていますね。
森田:僕は俳優としてのキャリアがあったため、声優の仕事では最初から現場に入ることになり、先輩のやり方を見様見真似で覚えつつ、手探りで自分なりのやり方を見つけていきました。身体を使って声を出すというやり方は、長年舞台で演じてきた経験があってのものだと思います。今、声優を目指している学生の多くは、アニメやゲームといったコンテンツを見て育ってきていることもあり、声だけの演技を真似て同じような演技をしがちです。でもそれは僕からすればいくら上手であっても「泣いているふり」の説明的な演技に感じます。声優であっても身体を意識した演技を大事にしてほしいですね。

森田:長年俳優をやってきましたが、ほんの数年前の舞台作品で今までで一番高みの演技をすることができました。素晴らしい脚本に描かれた登場人物を演じることは暗闇の中で小さなダイヤモンドのかけらを見つけるようなもので、見つかったと思うとまた新たな暗闇があります。苦しいのですが、追い求めてしまいます。俳優の仕事は奥深く、それゆえにおもしろいものです。また、俳優?声優をふくめたエンターテインメントの仕事の根本は、人をどう楽しませることができるか。そのためには自分が何でもおもしろがる必要があります。まずは一緒にいろいろなことに挑戦し、おもしろがりましょう。そうすることで自ずと道は拓けていきます。

俳優、声優/日大芸術学部演劇学科卒業後、文学座に入る。「3年B組金八先生」で乾先生役を32年間演じた。文学座退座後は、フリーを経て、マウスプロモーションに所属。洋画、海外ドラマの吹き替えやアニメ、ゲーム、ナレーションなど声優としても活動。
